米国 - 障がいを持つ航空旅客の権利章典
I. 尊厳と敬意をもって扱われる権利
航空会社および航空会社の従業員と請負業者は、障がいをお持ちの個人を障がいを理由に差別してはなりません。
- たとえば、航空会社は、お客様の障がいまたは障がいの特徴として表れた外見または無意識の行動を理由として、輸送またはその他のサービスを拒否することはできません。
- 航空会社は、障がいをお持ちのお客様に特別なサービスを受けることを要求したり、他の旅客には適用されない制限を課したりすることはできません。ただし、お身体の不自由なお客様は、障がいに関連する特定のサービスを受けるために早めのチェックイン、事前通知または書類提出、あるいは優先搭乗が必要な場合があります。
- 旅行者に対応する航空会社の職員は、お身体の不自由なお客様のニーズと、安全かつ尊厳を持って対応する方法を認識するように訓練されている必要があります。
- 航空会社の従業員と請負業者は、少なくとも3年に1回再訓練を受けなければなりません。Complaint Resolution Official(障がいに関連する問題を解決するための航空会社の専門家)は、毎年再訓練を受けなければなりません。
II. サービスおよび航空機の機能と制限に関する情報を受け取る権利
航空会社は、ご要望に応じて、利用可能な施設やサービスに関する情報を障がいをお持ちのお客様に提供する必要があります。情報は、実行不可能でない限り(予測できない航空機材の変更が発生した場合など)、お客様のフライトに使用予定の機材に関するものでなければなりません。
航空会社が提供しなければならない情報には以下が含まれます。
- 航空機材関連、サービス関連、または水平搭乗における制限といったお身体の不自由なお客様を収容する機能に関するその他の制限(航空会社は、お客様から情報提供のリクエストがなくても、車椅子を使用して搭乗されるお客様にこの情報を提供する必要があります)
- 機内の保管スペースの制限
- 補助機器
- 可動式ひじ掛けを備えた通路側座席の場所
- 機内の車椅子でご利用可能な化粧室の有無
- 機内でご利用いただけないサービスの種類
III. アクセス可能なフォーマットで情報を受け取る権利
座席数が60席を超える航空機を使用する航空会社は、航空会社の主要ウェブサイトをすべての人がアクセスしやすいようにしなければなりません。さらに、航空会社は、2016年12月以降に年間10,000人以上の旅客が利用する米国の空港に設置された自動セルフサービス・チェックイン機がアクセシブルなモデルで、各空港に設置されたセルフサービス・チェックイン機の25%がアクセシブルなモデルであることを確認する必要があります。
視覚または聴覚に関するサポートが必要なお客様は、ゲート、発券カウンターエリア、カスタマーサービスデスクおよび機内で、他の旅客と同じ旅行情報を迅速に受け取る必要があります(航空会社の従業員の安全義務を妨げない限り)。
航空会社は、コミュニケーションに関するリクエストを認識できるように職員を訓練する必要があります。職員は、視覚、聴覚、または聴覚に障がいのあるお客様とのコミュニケーションに最も一般的な方法(筆記などすぐに利用できる方法)を使用する訓練を受ける必要があります。また、職員は、利用可能な場合は点字カードを配る、お客様が提供する情報シートを読む、通訳者を介してコミュニケーションをとるなど、目の不自由なお客様とコミュニケーションをとるための確立された手段を使用する訓練を受ける必要があります。
IV. アクセシブルな空港施設に関する権利
航空会社および米国の空港運営者は、空港施設のアクセシビリティについて責任を負っています。米国航空アクセス法(ACAA)およびその施行規則である連邦規則集(CFR)第14巻パート382には、航空会社の義務が記載されています。障がいを持つアメリカ人法(ADA)、1973年に制定された米国リハビリテーション法のセクション504、およびその施行規則といった、その他のさまざまな連邦法および規定が米国の空港運営者に適用されます。航空会社および空港運営者は、空港施設のアクセシビリティを保証する義務を同時に負っています。
本権利章典はACAAに基づき航空会社が負う義務をまとめたものです。通常、航空会社は、自社が所有、リース、または管理しているターミナル施設が、米国の空港でお身体の不自由なお客様が容易にアクセスおよび使用できるようにし、米国外の空港でも容易に使用できるようにしなければなりません。空港は、所有、運営、または航空会社を含む他の関係企業にリースしている施設のコンプライアンスを保証する責任があります。航空会社は、ゲートと飛行機の搭乗場所とを結ぶルートを障がいをお持ちのお客様も利用できるようにしなければなりません。ボーディングブリッジ経由の搭乗など、水平搭乗を利用できない場合、航空会社および米国の空港は、駐機場または機械式リフトをほとんどのフライトで利用できるようにする必要があります。また、航空会社は、空港運営者と協力して、空港に介助動物のリリーフエリアを設ける必要があります。
V. 空港でサポートを受ける権利
お身体の不自由なお客様には、ご要望に応じて、適切な訓練を受けた航空会社の職員による迅速かつタイムリーな搭乗および降機時のサポートを提供する必要があります。サポートには以下が含まれます。
- 職員によるサービス、および空港内用車椅子、アクセシブルな電動カート、搭乗用車椅子、機内用車椅子、駐機場または機械式リフトの使用(必要に応じて)
- カーブサイドからご出発までの移動のお手伝い、乗り継ぎ時のゲート間の移動のお手伝い、到着からカーブサイドの乗り場までの移動のお手伝い
- 発券カウンターやバゲージクレーム(受託手荷物受取所)などターミナルの主要な機能エリアへのアクセス、またはトイレの入り口へのアクセスのサポート(時間に余裕がある場合)
- 米国の空港で介助動物を同伴するお客様をリリーフエリアまで付き添い
空港に到着する前にお手伝いをご希望のお客様は、サポートを受けるために空港またはゲートに到着次第、航空会社の職員にお申し出いただく必要があります。
航空会社は、お客様が希望していない特定の形式のお手伝いを受け入れるよう、お客様に求めることはできません(例:場所の案内を希望されたお客様に車椅子の使用を求めるなど)。
さらに、航空会社は、車椅子またはその他の機器を利用している旅客を自身で移動できない状態で、30分以上付き添いがいないままにしてはなりません。
VI. 機内でサポートを受ける権利
航空会社は、ご搭乗、補助機器の収納、または着席に追加の時間またはお手伝いが必要だとゲートで確認が取れたお身体の不自由なお客様に対し、他のすべての旅客よりも先に搭乗する機会を与えなければなりません。
- ただし、オープンシーティング方式を採用している航空会社は、最初のグループの旅客が搭乗した後でも、搭乗手続きの早い段階で時間を要する旅客に対応することがDOTによって認められています。
お身体の不自由なお客様には、ご要望に応じて、適切な訓練を受けた航空会社の職員による迅速かつタイムリーな搭乗および降機時のサポートを提供する必要があります。
- これには座席への移動および座席からの移動のお手伝いも含まれます。
- 水平なボーディングブリッジが利用できない場合は、米国のほとんどの空港で、お身体の不自由なお客様が航空機に安全に乗り降りできるように、昇降装置を用意する必要があります。ただし、小型機(座席数が19席未満)への搭乗を除きます。
- 小型機および主要でない米国の空港または米国外の空港の場合、航空会社は、お客様が許可する利用可能な手段によって、搭乗および降機のサポートを行う必要があります。
- ただし、航空会社は、緊急の場合を除いて、機内または機外でお客様を手で運ぶ(航空会社の職員がお客様の体を腕に抱えて直接持ち上げる)ことは決してしてはなりません。
お身体の不自由なお客様のご搭乗後は、航空会社はご要望に応じて以下のようなサポートを行う必要があります。
- トイレへの移動および機内用の椅子の使用(ご要望に応じて)
- 補助機器を含む機内持ち込み手荷物の収納および取り出し
VII. 補助機器または介助動物を同伴して旅行する権利
補助機器を機内に持ち込んで旅行されるお客様
航空会社は、安全規則に従って補助機器を機内持ち込み手荷物として機内に無料で持ち込むことを許可しなければなりません。
- これには、障がいをお持ちのお客様をサポートする医療機器や個人が使用する量の医薬品が含まれます。
- 補助機器は、旅客の機内持ち込み制限の対象としてはなりません。
- 旅客用の座席が100席以上ある航空機では、少なくとも1台の通常サイズの折りたたみ式手動車椅子用に機内の優先収納スペース(クローゼットまたはストラップで固定する指定の座席列のいずれか)を利用できるようにする必要があります。
- 座席にストラップで固定する方式を採用している航空会社は、2台目の車椅子を収納しても旅客を移動させる必要がない場合、少なくとも車椅子2台分のスペースを確保する必要があります。
- 優先収納に関する要件は、旧式の航空機には適用されません。
客室での輸送ができない手動車椅子は、安全性とセキュリティの要件に従って、貨物室で輸送する必要があります。航空会社は、貨物室に収まるサイズで、安全性とセキュリティの要件に従って輸送できる場合、バッテリー式電動車椅子を受け入れなければなりません。また、航空会社はターミナルで使用する補助機器をゲートで問題がないか確認し、適時に返却する必要があります。航空会社が車椅子またはその他の補助機器を紛失、破損、または破壊した場合、航空会社は車椅子または補助機器の元の購入価格を上限として補償を提供する必要があります。
介助動物を同伴してご旅行されるお客様
航空会社は、以下の条件に該当しない限り、お身体の不自由なお客様が機内の客室に介助犬を同伴することを許可しなければなりません。
- 介助犬が他人の健康や安全に直接的な脅威を与える場合
- 客室内または空港のゲートエリアで、介助犬が重大な混乱または不適切な行動を引き起こす場合
- 介助犬の輸送が米国または米国外の法律に違反する場合
- 航空会社が定めた旅行に必要なDOTフォームが提供されなかった場合
航空会社の職員は、お客様が同伴を希望する介助犬の輸送を拒否する決定を下す場合、その根拠はリスクの性質と危害が実際にまたは継続して発生する可能性を考慮した、当該の介助犬の個別的かつ客観的な評価に基づいたものでなければなりません。評価を行う際は、緩和策が利用可能かどうかも検討する必要があります。
問題を緩和する手段がある場合、航空会社は介助犬の輸送を拒否することはできません。
VIII. 座席に関して特別な配慮を受ける権利
航空会社は、航空会社の職員が特定の座席が必要だと確認した以下の旅客に対し、ご利用の機材の同じサービスクラスに特定の座席がある場合は、その座席を提供しなければなりません。
- 可動式ひじ掛けを備えた通路側のお座席 – ご搭乗に際しアイルチェア(機内用車椅子)をご利用のお客様で、通路に面した固定式の肘掛けが移動の妨げになる場合
- バルクヘッド席またはその他の座席 – お客様が特定の座席に最適な介助動物を同伴される場合
- より広いレッグルームのお座席 – お客様の脚が固定されている、または足を動かすことができない場合
- 隣接する座席 – 特定の種類のサポートを行う以下のような同伴者:
- お身体の不自由なお客様の食事の介助など、航空会社の職員が行う必要のないサポートを行う付き添いの介助者
- 視覚に障がいのあるお客様のための代読者
- 聴覚に障がいのあるお客様のための通訳
- お身体の不自由なお客様が自分で避難できない場合の安全支援担当者
上記に指定されていない旅客については、お客様が航空会社の手順に従っている場合、航空会社はお身体の不自由なお客様のサポートに最も適した座席を割り当てなければなりません。
航空会社は、次の3つの方法のいずれかで座席を提供する必要があります。ブロック方式、優先方式、または優先搭乗(航空会社が事前に座席指定を行わない場合)。Visit the DOT Seating Accommodation Methods page to learn more about these seating methods and for the seating methods of the largest U.S. airlines and their operating partners, which account for approximately 95 percent of domestic passenger air traffic. 同サイトでは、一部の海外の航空会社が採用している座席指定方法に関する情報もご確認いただけます。
IX. 機材のバリアフリー設備に関する権利
1992年4月以降に米国の航空会社に納入された新しい機材、および2010年5月以降に海外の航空会社に納入された新しい機材には、以下のバリアフリー設備が必要です。
- 通路側座席の半数に可動式ひじ掛け(座席数が30席以上の航空機)
- DOTは、一部の航空会社が、お身体の不自由なお客様に実質的に同等またはそれ以上のアクセシビリティを提供する代替手段によって、この要件の目的を満たすことを承認しています。
- 客室内に車椅子用の優先収納スペース(座席数が100席以上の航空機)
- 1つ以上のアクセシブルな化粧室(複数の通路がある航空機)
- 機内用車椅子(航空機に車椅子でご利用可能な化粧室がある場合、または車椅子で利用できない化粧室をお客様が使用することができ、化粧室までの行き来に機内用車椅子が必要であることを航空会社に事前に通知した場合)
航空会社は、座席数が30席以上の旧式の航空機の通路席を交換する場合、通路側座席の半数を可動式ひじ掛けにする必要があります。また、航空会社はワイドボディ機の化粧室を交換する場合、車椅子で利用可能な化粧室にしなければなりません。
X. 障がいに関連する問題を解決する権利
航空会社は、お客様がComplaint Resolution Official(CRO/苦情相談担当者)を適時に利用できるようにしなければなりません。ご相談は電話で行うことができます。
- CROは、障がいに関連する問題をその場で解決できるよう、障がいに関連する問題を解決する専門家として訓練を受ける必要があります。
- 航空会社は、お客様からの苦情に記載されている障がいに関連する問題に対し、30日以内に書面で対応して直接対処する必要があります。ただし、航空会社は、DOTが苦情について航空会社に照会しない限り、インシデント発生後45日以上経過してから送られた苦情に対処する必要はありません。
- DOTは、インシデント発生から6か月以内に受け取った障がいに関連するすべての苦情を、適切な航空会社が対応できるよう照会します。
- DOTは、受け取ったすべての障がいに関連する苦情を調査して、米国航空アクセス法に違反しているかどうかを判断します。
- 自身の権利について差し迫った問題があるお身体の不自由なお客様は、航空会社のCROに相談することができます。航空会社は運航中、サービスを提供する各空港でお客様がいつでもCROを利用できるようにしなければなりません。お客様は、お身体の不自由なお客様向けのDOTフリーダイヤル・ホットライン(1-800-778-4838)にご連絡いただくこともできます。ホットラインの受付時間は、月曜日~金曜日の8:30am~5:00pm(米国東部標準時間)です。